カサゴ
カサゴ(笠子)は東京神奈川方面の地方名が標準和名に採用されて定着した名前だ。
カサゴは非常に多くの地方名があって、また同じ地域でも人によって違っていたりと多様である。
そんなカサゴの地方名を見てみよう。
まずカサゴだが、魚名考によれば「痘痕(あばた)の様な模様を持つので瘡魚(かさご)と呼ばれた。」とある。
あばたは天然痘(疱瘡)の跡だったり吹出物やニキビの跡などの事だ。
そして瘡(かさ・くさ)はできものはれものなど皮膚病の総称だったり傷の治りぎわに出来るかさぶたの事である。
あばたの方言を由来とするカサゴの地方名はとても多くて、アラカブ(長崎九州)はカブが痘痕の方言でアラは「タラ」の訛ったもので「斑(まだら・たら)の事である。「まだらなアバタの魚」でアラカブ。アラはクエの地方名だがこれもマダラの斑の訛りだろう。
ガシラ(関西)は「ガシ・ガジ・カシ」が痘痕の方言でラが魚名語尾だ。
チガシラ・アタガシ(和歌山三重)は「血の様な赤いガシラ」「アタ(斑まだら)の模様のガシラ」
水深のあるポイントの大きなカサゴは赤みが強い固体が居たりする。もしかしてウッカリカサゴかも。
ゴウチ(山口県)・ゴウザ・ゴウゾウ(福岡県)
「ゴ・ゴウ」もアバタを表す方言だ。ちなみにゴギも痘痕魚の語源説がある。
「ガンガラ(兵庫県)ガンガラハツメ(石川県)ガラ・カラコ・ガラカゴ(山口県)」
ガンガラとは「雁瘡(がんがさ)」という皮膚病の事で雁が来る冬に湿疹になって春に治るというもの。要するに冬の乾燥肌だ。
痘痕とは関係ない地方名で「ホゴ(広島県愛媛県)・ホウゴウ・ウドホーゴー(周防大島)・ワゴ・フゴ(高知県)ボコ・ボッカ・ボッコ(島根県)」がある。
藁を編んで丸くカゴ状にして縄で取手を付けた、野菜などを入れて運ぶものをフゴ(畚)と言う。(同じ漢字だが四角に編んで土を運ぶのはモッコ)
口を大きく開けてポケーっとしてたり、口ばっかりで仕事をしない人間を「ふご」って呼ぶ悪口があったようだ。
「磯の笠子は口ばかり」という諺もある。口先ばかりで実行力のない人間を喩えたもの。
江戸時代の文献「魚鑑」に"アンポンタン"と呼ばれていたと記載されていて、魚河岸に口を開けて並んでいるからと言う事らしい。
深い海から釣り上げると水圧の変化で目が飛び出したり胃が出たりしてその姿を見てアンポンタンやホゴって言ったらしい…ちょっと酷くないですかね…
「カガネ・ガガネ(和歌山県南部、徳島県南部)・ガガニ(高知県)」は、カガチはホオズキの古語で、そこから「赤く丸いもの」となった。大蛇の事をカガチと呼んだり、ヤマカガシの語源であったりする。
カガネは「赤く丸い魚」という意味だ。
東北や北海道では「アカゾイ・アカズイ」と呼んだりする。赤いソイですね。
アコウ・アカゲ・アカウオ(茨城県静岡県)はそのまま"赤い魚"だ。
「ゴッチョオ(和歌山県)・シャシャコ(隠岐島)・ガーブジョー(種子島)」
カサゴの穴釣りとかすると餌に飛びついてくるのが見えたりする。
なるほど、わんぱく小僧とか乱暴者とか貪欲な餓鬼のようなイメージの方言がこれらの由来となっている。
ガーブジョーはイソゴンベの方言でもある。
その他面白い地方名に、「ツラアラワズ」(神奈川県三浦半島)。江戸時代だろうか、ひねって来ますな。顔が醜悪なので"面洗わず"…酷いな!
兵庫県日本海側の地方名「ロッコウ」
ロッコウの由来がサッパリわからない。
0コメント