サバ
サバは海の釣りの対象魚としてとても馴染み深い魚だ。
堤防や漁港でのサビキ釣りでお手軽に狙えるし、大サバになると船から狙う事もある。そして釣り人の特権で「新鮮なサバ」を食べられる幸せ。
我々ライトゲーマーにとっては尺アジ狙っててのサバとかイカメタルで船に乗ってサバとか、しばしば地獄を味わされるビックリゲストでもある。
サバの特徴はその"走り"だ。
釣り上げると全身が振動し"サバイブレーション"と揶揄してしまうほどの全身の推進力を持って、一度ヒットすれば右に左に走り回ってラインを引っ掻き回す。
沖に出ればよく引く魚は多いが、身近に釣れる魚でこれほど左右に走って大暴れするのはサバが1番だろう。
サバの語源として「歯が小さいから小歯と書いてサバ」というのが有力とされている。
これは釣り人からするとサバを表しているとは全く言い難い。「あの小さい歯の魚がさあー」と言われて「ああ、アレか」ってなりますかって事だ。
また「多い」という意味の古語「さは」が由来ともある。
しかし語源となるほどまでにサバがそんなに多いか? 一つの群れの構成数ともなればアジやイワシの方がダントツで多いだろう…むしろサッパの語源かもしれない。
どうも全て俗説だろう。
「さば」という古語を探してみると、古事記の天照大神の"天の岩戸の神話"に出てくる。
「故於是、天照大御神見畏、開天石屋戸而、刺許母理此三字以音坐也。爾高天原皆暗、葦原中國悉闇、因此而常夜往。於是萬神之聲者、狹蠅那須此二字以音滿、萬妖悉發。是以八百萬神、於天安之河原、神集集而訓集云都度比、…」
「そこで天照らす大神もこれを嫌つて、天の岩屋戸をあけて中にお隱れになりました。それですから天がまつくらになり、下の世界もことごとく闇くらくなりました。永久に夜が續いて行つたのです。そこで多くの神々の騷ぐ聲は夏の蠅のようにいつぱいになり、あらゆる妖わざわいがすべて起りました。こういう次第で多くの神樣たちが天の世界の天の安の河の河原にお集まりになつて…」
ここに出る「狹蠅那須さばえなす」は夏の蝿のようにブンブン騒ぐ、大騒ぎする、右往左往するさま、である。
また日本書紀、応神天皇の治世3年の記事に、
「三年冬十月辛未朔癸酉、東蝦夷悉朝貢。卽役蝦夷而作厩坂道。十一月、處々海人、訕哤之不從命。訕哤、此云佐麼賣玖。則遣阿曇連祖大濱宿禰、平其訕哤、因爲海人之宰、故俗人諺曰佐麼阿摩者、其是緑也。是歲、百濟辰斯王立之、失禮於貴國天皇。故遣紀角宿禰・羽田矢代宿禰・石川宿禰・木菟宿禰、嘖讓其无禮狀。由是、百濟國殺辰斯王以謝之、紀角宿禰等、便立阿花爲王而歸。」
「十一月に、各地の海人が騒いて、命に従わなかった。訕哤は"さばめく"と読む。 阿曇連(あずみのむらじ)の先祖である大浜宿禰(オオハマノスクネ)を遣わして、その騒ぎを平定した。 それで海人の統率者とされた。 当時の人々の諺に「佐麼阿摩さばあま」と言うのは、これが由来である。」
現代では既に「さばあま」ということわざは失われて意味は詳しくは分からない。
しかし「さばめく」は文脈から推察し現代語訳として「騒ぐ・騒乱する」と当てている。
サバの語源は「大騒ぎする・右往左往する・騒乱状態となる」という意味の古語「さばめく」から由来したのが間違いないと思われる。
サバを釣ったことのある人にとって、もうこれ以上サバを的確に表現した名前はないだろう。
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