カレイ

鰈(カレイ)の語源は諸説俗説が混ざって難しい。
『本草和名』に「鰈は加良衣比(カラエヒ)」と読む、とある。これが訛って"かれい"と呼ばれるようになった。
一説に「カラは(韓)、またはカレ(枯)でエヒは(鱏エイ)である。カレイはエイの仲間であるとされた」とある。

エイの仲間?ちょっと待って!
昔とはいえいくらなんでもカレイとエイを同類とはしないだろう。しかも韓国で良く獲れたからとも言われている。それも無い。
衣比(エヒ)は別の物の名前だろう。

カレイは全国で通用する名前であるのに由来が不明、加工し保存がしやすい、数も揃い漁業として成り立つ。
これらの特徴は奈良時代の調(海産物による納税)の為に命名された魚であろうと推測される。

えひ(衣比)と"衣"の漢字が使われているので衣服関連の古語を調べると、「えひかう(衣被香・裛衣香)」という物がある。
これは栴檀の香木を和紙に包み衣服に挟んで収納して服に香りを付ける方法の事で、現在でいうセンダンではなくインド原産のビャクダンの事である。
ビャクダンは葉や樹皮は匂わず芯材が匂う。
香木へ加工し製品にする時、心木のままの長木、小さく刻んである刻や爪、四角に切ってある角割、そして切葉という製品名がある。
"白檀切葉"は見た目は葉に似ているが葉っぱではなく生の幹を薄くスライスし乾燥された物をいう。
茶色で葉っぱの様な薄い香木。
とても"魚のカレイ"にそっくりだと思う。

もう失われた言葉であるが、衣被香を何年も使い香りがしなくなった物を「空衣被香・枯れ衣被香(からえひかう・かれえい)」と言ったのではないか。
もっとも香りの無くなった切葉は細かく砕いて焚けばお香になる。おそらく庶民が高級品のお香を手に入れる事は出来ないので、「からえい」を貴族からお下がりを入手していたのでは。
奈良時代、都の官僚である貴族出の役人が、庶民の魚であるカレイを「からえひ」に似た魚と名付けた。
その可能性は大いにあると思うのだ。

釣り人語源考

魚の語源や海の地名の由来など 釣り人目線での語源考です。

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